パーソナルジムを自分で開業するのかフランチャイズでやるのか考えてみよう

パーソナルジムの開業形式には、大きく分けて「フランチャイズ」と「個人経営」の2種類があります(※)。

フランチャイズと聞くと、一般的にはコンビニやラーメン店、クリーニング店などのイメージが浮かびますが、パーソナルジム業界にもフランチャイズがあることをまずは理解しておきましょう。

ここでは、フランチャイズと個人経営のパーソナルジムの違い、それぞれのメリット・デメリット、フランチャイズが向いている人、個人経営が向いている人などについて解説しています。

※フランチャイズも個人経営の一種ですが、当記事では「フランチャイズではなく独力で行う開業」を指し、便宜上「個人経営」という表現を用いています。

フランチャイズとは?

フランチャイズとは、本部が持つ商標や経営ノウハウなどの使用権を加盟店へ与える代わりに、加盟店から本部へロイヤリティという対価を支払ってもらう業務形態のことです。

一般的には、コンビニやラーメン店、クリーニング店、居酒屋、ファストフードなどによく見るシステムですが、パーソナルジム業界にもフランチャイズは拡大しています。

経営者自身のオリジナリティや経験値を活かす個人経営とは違い、事業経験に乏しい人でも比較的簡単に独立開業できるとして、フランチャイズ形態は世界中の経営者の間で人気です。

フランチャイジーとフランチャイザーの違い

フランチャイズという事業形態には、「フランチャイジー」と「フランチャイザー」という似た2つの言葉が登場します。

フランチャイジーとは、本部の商標や経営ノウハウ等を使って営業する加盟店のこと。フランチャイザーとは、加盟店へ商標や経営ノウハウ等の使用権を与えている本部のことです。

一見、フランチャイジー(加盟店)はフランチャイザー(本部)の「支店」「部下」のような立ち位置にも感じられますが、あくまでも双方は対等な関係にある事業パートナー同士。

どちらの立場が上か、という事業形態ではありません。

フランチャイズのパーソナルジムと個人経営のパーソナルジムの違い

フランチャイズのジムと個人経営のジムの主な違いを6点ほど見てみましょう。

開業までに行うべき準備

フランチャイズの場合、開業までに行うべき準備は決まっています。加盟店ごとに個別の対応が必要になることもありますが、基本的には本部が用意している開業プロセスを実行するだけで、ほぼイメージ通りに開業当日を迎えられるでしょう。

一方で個人経営の場合、開業までに行う全ての準備を経営者自身が計画し、実行していかなければなりません。必要に応じて外部の専門家のサポートも受けるなどし、綿密な計画のもとで準備を進めていく形となります。

ジムの屋号やサービス内容

フランチャイズの場合、ジムの屋号は本部が用意している商標名になります。また、提供するサービス(トレーニングのプランや料金など)も、基本的には本部が設定した全店共通の内容です。

一方で個人経営の場合、ジムの屋号は経営者が自由に命名可能です。サービス内容も経営者が自由に設定できます。

開業資金

フランチャイズも個人経営も、開業には大きな資金が必要となります。

フランチャイズの場合、本部が店舗を用意する仕組みなら多少は初期費用を抑えられますが、加盟店が自ら店舗を用意する仕組みなら、ジムの規模に応じて数百万円の開業資金が必要となるでしょう。

一方で個人経営の場合、店舗は必ず経営者が用意する形となるため、その分、物件取得費が大きくなる傾向もあります。

自宅で開業したり小規模な物件を借りたりすれば初期費用を抑えることも可能ですが、往々にしてフランチャイズより個人経営のほうが初期費用は高くなると言われています。

経営方針

フランチャイズの場合、本部が決めた経営方針に従う必要があります。多少なら店舗のオリジナリティも本部に黙認してもらえるかもしれませんが、ブランドとしてのサービスの質を毀損しないよう、大きなオリジナリティを出すことはできません。

一方で個人経営の場合、経営者自身のオリジナリティを存分に発揮することが可能です。トレーニングの内容、プラン、付帯サービス、料金、店舗の内装など、全ての面を経営者の自由意志で決められます。

契約期間の有無

フランチャイズには契約期間があり、この契約期間内は、原則としていかなる理由があっても閉店できません。経営不振や体調不良等を理由に、どうしても閉店せざるを得ない場合、加盟店は本部から違約金を請求されることもあります。

一方で、個人経営のジムには契約期間が存在しないため、経営を続けるも閉店するも、フットワーク軽く動けるのが特徴です。経営不振に陥ったならば、経営方針やサービス内容を大きく変更して再起を図ることも可能です。

ロイヤリティの有無

フランチャイズでは、一般的に加盟店が本部へロイヤリティを支払う形となります。

「売上の○%」「売上に関わらず定額○円」など、ロイヤリティのルールは本部の方針により異なりますが、本部のブランド名やサポートを受けて経営する以上、必要経費と考えなければなりません。

一方で、個人経営の場合、ロイヤリティは存在しないため、売上から経費を差し引いた収益は全て経営者のものです。

シンプルに収益率だけを見れば、ロイヤリティが存在しない分、フランチャイズより個人経営のほうが高くなるかもしれません。

フランチャイズでパーソナルジムを開業するメリット・デメリット

フランチャイズでパーソナルジムを開業する主なメリット・デメリットを見てみましょう。

メリット

経営の未経験者でも無理なくジムを開業できる

ジムの開業に必要な一連のプロセス・ノウハウは本部が用意しているため、経営者がゼロからリサーチを行ったり経営コンサル会社等を出入りしたりする必要はありません。

経営未経験者が起業するには、多くの手間・時間・勉強を要しますが、これらが全てマニュアル化されている点は、フランチャイズの大きなメリットとなるでしょう。

ジムの運営に集中できる

加盟店と本部は、いわば一心同体。加盟店の売上が上がればこそ、本部の懐も潤うという相互関係にあります。

そのため本部は、各店舗の売上向上のため、CMなどの宣伝を行ったり経営アドバイスを行ったりなど、常に様々なサポートを実施してくれるでしょう。

経営者は営業活動などの手間・時間を省けるため、本来業務であるジムの運営に集中しやすくなります。

本部のブランド力が店舗の営業力となる

業種を問わず、店舗運営において最も重要とされる項目が営業です。いかに優れたサービスを提供していたとしても、そのサービスを知らしめるための営業活動を行わなければ集客できません。

フランチャイズの場合、すでに確立された本部のブランド力自体が店舗の営業力にもつながるため、集客の点では大変優位とされています。

割安で設備を導入できる傾向がある

フランチャイズ加盟店をたくさん持つ本部の場合、そのスケールメリットを活かし、ジム運営に必要な設備や備品をメーカーから割安で一括購入できることがあります。

そのため、本部を経由して設備や備品を導入した場合、仕入れコストが割安になることもあります。

創業融資の審査が有利になることもある

フランチャイズの場合、すでに存在している類似店舗の業績をチェックすれば、新規開業予定の店舗の将来的な業績も、概ね予想できます。

そのため、まったく将来が未知数の個人経営のジムに比べると、フランチャイズのほうが創業融資の審査で有利になることもあると言われています。

デメリット

自由な運営ができない

フランチャイズでは、基本的にどの加盟店も金太郎飴のような運営をしなければなりません。

サービスの内容、プラン、料金などにおいて、経営者のオリジナリティを発揮できる余地はほとんどないとされています。

独立して自由に経営を行っていきたい人にとっては、フランチャイズという仕組み自体に窮屈さを感じるかもしれません。

本部へロイヤリティを支払う必要がある

先にも説明した通り、加盟店は本部に対して所定のロイヤリティを支払う必要があります。

定額制ロイヤリティの場合、たとえ店舗経営が赤字でも、何らかの方法でお金を工面してロイヤリティを支払わなければなりません。

ロイヤリティの支払いが困難となりフランチャイズ契約を途中解約すると、次に説明する「違約金」を徴収されることもあります。

途中解約・閉店に制約がある

一般的に、フランチャイズには契約期間が設定されていますが、この期間内に店舗側の都合で閉店したりフランチャイズ契約を解約したりすることは、原則としてできません。

もし店舗側の都合で閉店・解約する場合には、本部から違約金を徴収される可能性があります。

本部のブランド力が低下すれば店舗経営も悪化する可能性がある

本部のブランド力が店舗の営業力に直結している側面があることから、本部のブランド力が低下すれば店舗経営も悪化する可能性があります。

昨今、寿司店などでのイタズラ動画をSNSにアップして騒動となった件が発生していますが、本部自体の不祥事に関わらず、他のフランチャイズ加盟店での騒動がきっかけとなりブランド力が低下するリスクもあります。

経営者としての主体性が育ちにくい

本部の方針に従って店舗の経営・運営がなされているため、加盟店の経営者では、経営者としての主体性が育ちにくくなることもあります。

加盟店の経営者は、あくまでも本部と対等の立場にある事業主です。「困ったら本部がなんとかしてくれる」と考えるのは間違い。

本部に甘える意識を捨て、自立した経営者としての厳しい自覚を持って経営にあたらなければなりません。

個人経営でパーソナルジムを開業するメリット・デメリット

個人経営でパーソナルジムを開業する主なメリット・デメリットを見てみましょう。

メリット

経営者の意思で自由にジムを運営できる

フランチャイズとは異なり、個人経営なら経営者の意思で自由にジムを運営できます。

これまで蓄積した経験や人脈等をフルに活用してオリジナリティあるジム運営を行えば、コアなファンを着実に増やしていけるかもしれません。

何より、本部や上司などからの制約が一切ない分、伸び伸びとした精神状態で仕事を続けることができるでしょう。

経営手腕次第で大きな収益を目指せる

経営の意思決定権がすべて経営者自身にある以上、その手腕次第では大きな収益を目指せる点も個人経営の魅力です。

ご存じの方も多いと思われますが、自宅で開業して1年で年収1000万円に達した某・パーソナルトレーナーがネット上では話題です。

デメリット

開業も運営も全て経営者自身が行わなければならない

経営コンサルや税理士などの専門家のサポートを受けない限り、開業も運営も、すべて経営者自身が一人で行うことになります。

起業経験のない人にとって、すべてを円滑に回すことは簡単ではありません。経営が安定するまでの間は、十分に休暇を取ることもできないでしょう。

大きく描いた夢をエネルギー源とし、起業に伴う数々の苦難を乗り越えていかなければなりません。

フランチャイズと個人経営のどちらを選んだほうが良い?

フランチャイズと個人経営。どのようなタイプの人が、どちらに向いているのでしょうか?

フランチャイズが向いている人

フランチャイズの最大の魅力は、すでに世の中で確立・浸透しているブランド力を使える点です。

対価としてロイヤリティを支払う必要はありますが、それでもブランド力を活用した効率的な経営を目指したい人には、フランチャイズでのパーソナルジム開業が向いているのではないでしょうか。

個人経営が向いている人

自分の経験やアイディアを活かし、制約のない環境の中で自由にパーソナルジムを育てていきたいと考えている人には、個人経営が適しているでしょう。

高収入を目指している人も、フランチャイズより個人経営を選んだほうが実現可能性は高くなるでしょう。

【まとめ】成否を決めるのは選択肢ではなく経営者としての工夫と努力

フランチャイズと個人経営のパーソナルジムを比較し、それぞれの主な違いやメリット・デメリット、向いている人などを解説しました。

それぞれの特徴やメリット・デメリットは大きく異なるものの、結論としては「カレーとラーメンではどちらが美味しいか」というテーマのように、正解のある議論ではありません。

メリット・デメリットをよく比較しつつ、自分の特性や思い描いている将来像などに照らし、適切と判断されるほうを選びましょう。

どちらを選んでも経営者である以上、選択肢ではなく自分の工夫や努力で成否が決まることを心得ておくことが何より大切です。